国際シンポジウム「北朝鮮の現状と拉致被害者の救出」全記録
総合司会 櫻井よしこ(ジャーナリスト)
まず議員の古屋さん、中井さん、西村さんの順でお話をいただきたいと思います。
2-2-1 在外公館の人たちにもブルーリボンバッジ着用を
古屋圭司氏(自由民主党拉致問題対策特命委員長、拉致議連事務局長、衆議院議員)
私どもは今日、国会だったものですから、アーサー・ブラウンさんの講演のメモを見て、身につまされる思いであります。今、麻生政権は本当に支持率が落ちてしまい、私も非常に辛い状態です。ただ反転攻勢のチャンスはあると思います。それは、こういった拉致問題に対して毅然たる態度で臨んでいく。拉致問題だけでなく、国家の主権にかかわる問題、例えば領土問題。今、対馬の問題をみなさんご存知でしょう。土地が買われて大変な状態になっている。合法的に国を乗っ取ろうとしていることに対して、土地を買うことは経済行為だから関係ないということではなくて、安全保障に関係することですから徹底的な対応をしていくとか、こういうことをすることによって支持率がしっかり回復していくことができると思います。また、国籍法が改正されてしまったんですね。私も気がつきませんで、本当に反省を込めて申し上げますけど、省令がありますので、そういったものにはきちっと、不具合な点、おかしい点を徹底的に是正していく。1回決めてしまったことでもおかしいと思ったことは大きく方針転換をするその勇気、こういったことによって支持率は回復していくことができると思います。
我々拉致議連は超党派ですので、中井先生とは国会の中ではドンパチする仲ではございますけれども、議連ではしっかり連携しております。
昨年、我々はアメリカに行って、テロ支援国家指定解除は絶対にまかりならんぞということを伝えてきました。その効があって何とか1年間は指定解除がなされなかったけれども、最後になってライス=ヒル ラインですね。これはもうブッシュが完全にやりこめられちゃったという感じで指定解除になった。しかし8月に金正日は倒れていたのですから、そんなことは分かった上で、最後にとんでもないことをしてくれたなということです。アメリカはテロ支援国指定解除をしても個別法があるから大丈夫だなんて言っていますが、あれにはみんな但し書きがあり、タコ足配線のような法律ですので、場合によっては制裁を解除することができるということになってしまう。やっぱり、こうなった以上は、私たちはしっかり、日本が主体的に取り組むべきと考えますが、政府の方針である「圧力と対話」という中で、日朝の再調査という合意も見事に反故にされてしまった。その理由は政権が代わったからだという。そんな馬鹿なことはない。いよいよ我々がしっかり、そういう方向に大きく舵を切っていかなくてはいけないのかなと思っております。
ただ一つの希望というか、一つの望みは、今度のオバマ大統領は、2000年にイリノイ州の金東植牧師が中国国境で脱北者の救援活動をしていて拉致された時、2005年にイリノイ州の上下両院で、北朝鮮の国連大使に対して、この問題が解決するまではテロ支援国家指定解除もしてはいけないという決議書を提出している。その時の一人にオバマも上院議員として入っています。そういうことからして、まだ少しは可能性がある。実は特命委員会でもつい先日やりましたけれども、まずやらなければいけないことは、今度の新政権に対して徹底的に我々は拉致問題が解決しない限りは一切、正常化、あるいは支援というものはしないということをアメリカにしっかり分かっていただく。実はAPECに斎木局長が11月下旬に行きましたよね。あの時にも我々が指示して、徹底的に次期オバマ政権のスタッフと会って、そしてしっかり議論してきてくれという要請をしました。相当やってくれたようであります。そういう取り組みをしていくことが大切だと思います。また我々としては、アメリカの民主党議員に対しても拉致議連を通じてそういった取り組みをぜひしたいと思っております。
それから、ブルーリボンバッジをわが国の在外公館の人たちにすべてしてもらう。そして、当然、在外公館の人たちにはカウンターパートがいますから、そういった皆さんにしっかりそれを渡して、日本がこれだけ熱心にやっているんだぞという意気込みを伝えるということを政府にも働きかけて、必ず実現したいと思っております。
◆野党と交渉の上制裁強化を
我々は制裁の強化ということに取り組んでいきたいと思います。恐らく中井さんからは民主党の相当強烈な案が出てくるだろうと思います。もちろん我々もやっております。北朝鮮人権法が昨年6月に改正されました。まずはこの北朝鮮人権法の更なる改正をしていきたい。特に拉致問題の定義は国の責務の中に入っているだけです。あるいは拉致解決にいくつかの条件を付ける。このすべての条件を回復しない限り拉致問題の解決ではない、というような定義を書くとか、あるいはIMFを中心とする国際金融機関に対しては拉致問題が解決しない限り絶対に支援させない。そのために日本政府として最大限の努力をするというようなことを現行法よりもかなり厳しく書いていくということでぜひまとめたい。これは野党との交渉がありますけれども恐らく賛成していただけると思っております。
その他にも、現行法に加えて輸出の全面禁止であるとか送金の禁止、そして日本版の金融制裁といったものも考えていきたいと思っております。やはり何といっても日本が主体的に行動していかなくては拉致問題は解決しない。だからこそわが国が如何に経済制裁を強化していくかということも特命委員会でもしっかり議論をしていきたいと思います。ただし、どういった制裁が効果があったのか、どれが効果があるのかということを詳細に検討していく必要があると思いますし、またそういった正しい情報をしっかりと把握していく作業も必要だと思います。アーサー・ブラウン氏は、ほとんど予算がないのではないかと言われたそうですけど、今6億円ぐらいの予算がついておりますけれども、内調等々で連携してやっておりますので、この問題にいくらかかったということは政府としてのインテリジェンスでありますのではっきり言うことはできませんけれども、やはりそういった体制も強化していく必要があるんじゃないかと思っております。というわけで、こういった問題を最優先の課題として取り組むことで、麻生政権の支持が回復すると思います。皆さん、ぜひ麻生さんを支持していただいて、また支持率が復活するようにお願いを申し上げたいと思います。
2-2-2 日本独自の制裁案を作るべし
中井洽氏(民主党拉致問題対策本部長、拉致議連会長代行、衆議院議員)
民主党拉致問題対策本部長として決意の一端を申し述べ、皆さんと一緒に頑張っていきたいことを申し上げておきたいと思っております。
昨年は古屋さんと一緒にアメリカへ参りました。今年5月のアメリカの北朝鮮人権週間には渡辺周君を派遣いたしまして、アメリカ議会、政府に指定解除反対の声を強く挙げたところでございます。また10月24日、25日とソウルで北朝鮮人権問題を考える議員の連帯会議の総会がございました。これも解散目前という状況でございましたが、中川正春副本部長以下5人の国会議員を派遣して韓国政府、あるいは30か国ぐらいお越しいただいている方々に、日本は拉致なんだということを強く訴えたところであります。しかし、家族の気持ちを思い、党独自で動くとか、党独自で行動するというのはあまりせずに、できる限り超党派の議連と一緒にやろうとして参りましたが、アメリカがああいうダブルスタンダードの交渉、北朝鮮金正日政権と手を握るというような交渉をやって、私ども友好国の感情を逆なでるような状況をやっている。これに鑑みて、二月ほど前から民主党として日本独自の制裁案を作るべしということで検討に入ってきたところでございます。一月ほど前に産経新聞に原案が載りましたので、ご承知の方も多いかと思います。それ以来、朝鮮総連の人からファックス、ファックス、またファックスでございます。とにかく同じ文句でワーワーと言って参ります。あれだけ言ってくるということは効果があるのではないかと、私どもは逆に自信を深めております。本部としてこれを決定して総会にかけていきたい。そして民主党が政権を取ったらこれを実行する。こういうことを強くアピールしていきたい。自民党さんがお付き合いいただくなら国会で成立させてもいい。こういうことで、両方の構えで頑張っていきたいと思っております。
◆渡航・再入国許可・輸出・送金・資本取引等全面禁止を
その中身をいくつか申し上げますと、一つはヒトの面での制裁であります。これは北朝鮮への渡航全面禁止であります。二つ目は北朝鮮からの入国も全面禁止。今は朝鮮総連の人の渡航禁止になっているのは6人だけですから、あとは自由に行けるんです。もう一つは在日の特別永住者の方が北朝鮮にお行きになるのは自由だ。ただ、お行きになったら、もう日本に入ってもらっては困ります。中国経由で行かれる方が行き先を偽ったら厳罰にします。こういう処置を取らせていただきます。
モノに関しては、北朝鮮輸出の全面禁止。今禁止しているのは贅沢品だけです。ありとあらゆるものを禁止。チャーターした船の入港はすべて禁止。北朝鮮に帰港して日本へ寄る船も禁止。船籍がどこであろうと禁止であります。
おカネに関しては、北朝鮮に直接、あるいは海外の北朝鮮関係金融機関への送金禁止。国内金融機関の海外の北朝鮮関係団体との資本取引禁止。北朝鮮関係団体の国内資産の海外移転の禁止。それから北朝鮮関係団体と取引する海外金融機関と国内金融機関との送金、資本取引禁止。ここまで踏み込むんだと、私どもは決意をいたしております。
それから、朝鮮総連その他北朝鮮関係団体施設への課税の適正化。これは私どももかなり言いまして、地方自治体も直していただいておりますが、まだ固定資産税だけで年間8億円ほどまけています。私どももいろいろ議論しましたが、北朝鮮の子どもさんの学校に対する補助をどうするかというのはまだ結論が出ておりません。子どもさんの教育だという面があるものですから。これは来週の議論でやっていきたいと考えております。これらをまとめて昨年改正した法律の中に書き込んで実行していく。こういう形で党として対応していきたい。大変厳しい決意、同時に、効果があるのかないのかといろいろ言われますけれども、日本人としての意思、思い、国家としてのぎりぎりの行動をやらなければ向こうは交渉に来ない。真面目に対応しない。もう十分分かっているわけであります。今日まで本当に緩い情けない交渉ばかりだった。私どもは反省も含めて残念に思っています。そういう意味で、こういう法律をもって頑張っていきたいと思います。ご理解の程よろしくお願いいたします。
2-2-3 拉致と核を並列において議論する必要はない
西村真悟(拉致議連幹事長、衆議院議員)
私がここで発言するということは、この二人(自民と民主)が言えなかったことを言えということだと思います。民主党案が党で通ることを希っております。
それから私のみ言えるのだろうということを2点申し上げます。これは核と拉致の問題の優先順位のつけ方であります。6か国協議をやっておりますし、また日本国内でも北朝鮮の核開発の問題で決着がつくなら、拉致問題を後回しにしてもいいのではないか、また日本に北朝鮮の核が落ちることを思えば、拉致問題は横へ退ければいいのではないか、こういう議論があります。北朝鮮が東京を火の海にすると恫喝した。核を持って恫喝してきた時にどうするのかという問題について私の考えを申し述べたいと思います。
結論は、核の問題よりも拉致被害者救出の問題が優先するということです。核の問題はもはや国際社会の普通の問題なんです。核を落とされたくなかったら、我が国家は、麻生内閣は核抑止力保持の決断をすればいい。それはアメリカもイギリスも中国もイスラエルもやっていることです。かつて核を持たない西ドイツのシュミット首相もNATOの二重の決断としてやりました。やったらやりかえすぞ、撃てば死ぬぞという体制を作ればいい。それだけの話です。我が国家ができることなんです。
これに反して拉致被害者救出問題は、国民のたった一度の人生が破壊されるという問題です。国民がこのような目にあっておって、そしてそれを知っておるのに、それを優先順位からはずす民主主義国家はもはや国家ではない。したがって拉致と核を並列において議論する必要はないということを皆さんに申し上げて、皆さんの共通認識にして頂きたいと思います。
◆国際社会に自国民の救出を主張しても孤立はしない
それから、本日も安全保障委員会があり、防衛省の給与の問題を可決するのに、全く関係のない付帯決議が超党派でなされた。それは、田母神論文がけしからんので、そのような考えを持っている陸、海、空の各幕僚長の人選を厳正にすべしというものです。かつてスターリンの軍隊を作るためにスターリンが政治将校を部隊に放ったように、我が国安全保障委員会は、村山富市の自衛隊を作るために防衛省の内局の役人どもを部隊に放つということをやっている。したがって、拉致被害者救出の最大の桎梏は村山富市談話であるということを言いたい。
単に国民を救い出すという問題のみではなくて、領土を守るということに関してもわが国政府が不作為を決め込んで、見て見ぬふりをして今まで経過してきたこと、この根底に村山歴史観があるということ。これに気づかなければ完全なる拉致被害者救出の迫力が出ない。朝鮮人の女性を大量に拉致して性的奴隷にして何も後の賠償もしていないではないか、謝罪もしていないではないかという決議案がアメリカ議会に出て通っている。これに対して我が日本の官僚組織は反論できない。村山談話があるためである。この談話をもって、拉致被害者救出、国民を返せと、我が末端の官僚組織がその点について迫力が出ないのは、まさにここにある。戦後体制からの脱却。これが拉致問題の全面解決の根底にあるという問題意識を我々は共通にしましょう。
中井先生が言われた民主党の追加制裁案に賛成でございます。それに加えて、麻生総理は、これは私も画期的だと思いますが、今回の金融危機においてIMFに10兆円を投入すると言った。これは、カネを持っているやつが出すのは当り前だと、近隣諸国は思っているんですよ。しかし、カネが必要なんです。日本が10兆円投入するといってよだれをたらしながら待っている近隣諸国があるわけでしょ。したがって、彼らが拉致被害者救出という日本の最優先国家問題に冷淡ならば、10兆円の提供は白紙に戻すという宣言をしなければならない。
最後に申し上げます。国際的孤立ではありません。6か国協議をひっくり返して、「そんな馬鹿な、ヒルの言うことに従えるか」と言うことは国際的孤立ではありません。自国民を救出するということは、その自国民の母国である日本しか言えないことを言って、国際的孤立なんだというような国際社会ではない。はっきり言うことによって国際社会に日本に対する尊敬の念と当然だという共感の念が生まれるものと確信しております。
中井
昨日、民主党へ韓国の李明博大統領のお兄さんが韓日議連の会長に就任ということで6人ほどの国会議員を連れてお越しになりました。その席で、私も日韓議員連盟の副会長をしているものですから、韓国は方針を変えて、拉致のこと、そして核のことは日本と一緒の歩調をとるということをはっきり言われました。私どもはお礼申し上げて、大至急連携をとるべきだと考えております。
もう一つ、去年、政府の拉致対策本部の予算のやりくりの中で、1億2千万円で短波ラジオ放送をやっている。これが1週間同じ番組だ。荒木さんところは毎日毎日中身を変えているんです。本部を呼んで、どうなっているんだと言いましたら、1億2千万を台湾で下請けさせている。ある団体に金を払って。その団体が1億取って台湾へは2千万しか払っていない。その団体は高級役人のOBばっかり。これは何だと。そういうことに少ない6億円を使って、何かやっているなんていうのは全く違う。僕らは直せと言っていますが、ぜひ自民党のほうも協力して直してください。お願い申し上げます。
古屋
今、中井さんからありましたが、せっかく我々が確保した予算が正当な使われ方をされていないのは極めて遺憾です。われわれとしてもしっかりフォローさせていただくことをお約束します。
櫻井
3人の国会議員の方々がおっしゃったことは、党は違いますけれども目標としての拉致問題の解決、そのためには超党派で、日本が一枚岩でなければならないんだということもおっしゃっているんだと思います。西村さんが問題提起なさったことは誠に奥が深いものであり、本来ならばこのことについて2時間でも3時間でもかけて議論をすべきだと思うんですけれども、今日は時間がありませんので残念です。ここで政治家の皆さん方のメッセージを心に深く受け止めて、それを実現していただくように彼らを元気付けたいと思います。どうも有難うございました。
さてここで、本当は政府の仕事なんですけれども、事実上政府に代わって特定失踪者について本当にご苦労なされながら地道な調査を続けてこられました調査会代表の荒木さんにお話をお願いします。
2-2-4 北から情報を取り、北に情報を入れる
荒木和博(特定失踪者問題調査会代表、拓殖大学教授)
今日はブラウンさんに私が言おうと思ったことをみんな話をされてしまった。私は元々、何年か前からアメリカ頼みはだめだと言っているのですが、なかなか皆さん、信じていただけませんで、今日ブラウンさんに言っていただいたので、これでやっと信じていただけるのではないかと思います。
私どもは、明後日、御茶ノ水の明治大学で、私どもと守る会、難民救援基金、RENK、NO FENCE、法律家の会合同のイベントを行います。お時間のある方はぜひおいでいただきたいと思っております。
先ほどの市川さんのお話の中で、お母さんの話が出ましたんですが、実はつい先日、特定失踪者のご家族の方からメールをいただきました。お母さんが、市川トミさんが亡くなられる前の日、11月14日に亡くなったというご連絡でございました。京都の前上昌輝さんのお母さんで前上なみゑさんとおっしゃいます。
調査会ができる前、私が救う会の事務局長をやっていた頃から息子さんが拉致をされたのではないかと、旭川でいなくなっておられて、私と一つ違いなんです
が、本当に身を粉にしてご自分でパンフレットを作って活動をしておられた方でございました。しばらく前から癌を患っておられるという話は聞いていたんですが、ついこの間メールが参りまして、ご家族に連絡をとりましたら、数か月前からホスピスに入っておられたということでございます。
もちろん家族会の市川トミさんでもそうなんですが、やっておりまして本当にご家族が亡くなったという、まあ当然そういう世代の方が多いもので、直接お会いした方でも何人も亡くなられているのですが、聞くだけで後頭部を棒で殴られたような気になるということがあります。これから先も恐らくそういうことが続いていくのではないだろうかというふうに思っている次第でございまして、これは毎回同じことを言っていても仕方がないのですが、とにかく状況を変えていくということしかないというふうに思います。
具体的にどういうふうに状況を変えていくかということなんですが、若干、この家族会、救う会、議連の方針と違うかもしれませんが、私自身が今実感していること等も合わせてお話申し上げたいと思います。
経済制裁、これは私どももやはり同じように更に強めてやっていくべきだと、この点に全く異存はございません。ただ、それをやって待っているということは許されないというふうに思います。どういうふうにして情報を取るか、どういうふうにして相手側に情報を入れていくか、その努力をして、相手の中に手を突っ込んで引っ掻き回していかなければ状況を変えることはできないと思っております。
ここにおられる方々の中で、恐らく私は一番直近に北朝鮮に行ってきた人間であると思います。11月26日に韓国からのツアーで、日帰りでございますが、開城の土を、初めて北朝鮮の土を踏んで参りました。
行くんだから何か起きるのではないか。元々、日本では自分がもし北朝鮮に入ろうとしたらどうなるだろうかと聞かれた時に、入れてくれないか、あるいは入れてくれたら喜び組でも付けてくれて大歓迎してくれるのではないかと言っておりましたんですが、残念ながらそのどっちもございませんでした。
簡単に入れて、向こうで何のトラブルもなく、向こうの案内員ともそれこそ核の話から拉致の話からして帰って参りました。よっぽど私は小者で相手にしてもらっていないんだなあと、後から考えると寂しい思いをした次第でございます。この次はぜひ、この中にも関係者の方がいらっしゃると思いますので、入ったらぜひ捕まえていただきたいとお願いしておきたいと思います。
自分自身日帰りで行ってきただけですから、それで北朝鮮のことを分かりますとか何とかは言えませんが、少なくともそれまで北朝鮮のことを自分の研究対象としてやってきたことと、実地に行って見たもので、ある程度ピントを合わせることができたような気がいたします。それは決してあの国は強くもなんともないということでございます。
こっちが待っていて、向こうが出てくるのを待っている必要がない。どんどん向こうの中に入っていって情報を取るということが必要でございます。観光で行って、観光地以外の写真は一切撮ってはまかりならんと、バスの中から写真を撮ってもいけないと言われましたけれども、見ていたら軍事施設らしきものが見えたりもします。行けば何かが分かる。そして話せば、向こう側のぼろが必ず出てくる。そこをつかんでこちらから情報を入れていくということが一番近道であろうと思っている次第でございます。
我々は韓国の基督北韓人連合と一緒にビラを飛ばしています。まあほとんど向こうの方々がやってくださっているんですが、その活動をやっております。この間、軍隊が大動員されて探したというのは、私たちと彼らがやっているもののビラでございまして、ビラは別々なんですけれども一緒に混ぜて送っていただいています。韓国側のビラにも調査会の連絡先とか簡単な内容については書いてくださっています。こういうものが届く。
◆ビラ、電波で風穴を開ける
開城に行って分かったんですが、ソウルから8台の観光バスを連ねて参ります。開城の町中にも入ります。一般の人とは一切接触ができません。しかし町にはいるんですね、一般の人が。バスの近くを通るのは、どうもヤラセらしい、いいものを着た人たちが通るんですが、そういう人たちは知らん顔をして通り過ぎる。
しかし、ちょっと離れた所からじーっとこっちを見ている人たちが沢山います。去年の12月5日から丸1年間このツアーをやって、8台位の豪華なバスが毎日あの開城の町中を、日本で言えば本当に廃墟のような町です。韓国に私が最初に行ったのは1970年代の終わりですが、あの時よりももっと遅れた町。これが韓国の観光客を入れてもいいと判断した町です。そこに観光客が行って、いいものを着た人がどんどん降りてくる。そして1日1ドルあれば1家族が1週間暮らせるという所でドル札をどんどん切って、ミネラルウオーター一つだって1ドルですから、そういうの見ていったらば、これはすぐに分かってしまう。そこへビラが来る、あるいは電波が。向こうの中に風穴が開けられることは間違いございません。
ついでに言えば、日本の中にも北朝鮮に行きたくてしょうがない人が沢山おられる。山崎拓さんもそうですし加藤紘一さんもそうでしょうし、それから民主党の議員さんの中にもですね、そういう人はどんどん行ってもらっていいと。北朝鮮もアホではございませんから山崎さんを信じているわけがないわけです。向こうに行って勝手なことを言いたいだけ言えば向こうは混乱をする。そういうことです。しかも山崎さんが行って帰ってきたからといってそれを信じる国民もマスコミもいないということでございまして、ともかくやらなければいけないのは、こちらからアクションを起こすことがどうしても必要です。
みなさん、この政府のパンフレットの一番後ろのところに北朝鮮への情報はということが書いてございます。これは最初の頃できていたパンフレットには入っておりませんでした。私はさんざん嫌われても言っていたんですけれども、ついに入れていただけた。しかし問題は政府の方針を変えなければいけない。この一番のタイトル、「すべての拉致被害者の帰国を目指して」ということでございます。
拉致被害者の方々は自分で好きで行って、好きで残っているわけではないんです。無理矢理連れて行かれたか、騙されて入って出られなくなったんです。政府は「救出する」と書かなければいけない。その方針にまだ到っておりません。これはお役人さんの考えでは変わりません。議会の力をもってこれを変える。政府の方針としてこれを取り返すというふうに変えていただかなければいけないと思っている次第でございます。
我々特定失踪者問題調査会としたしましては、これからもあちらこちらから嫌われながら、しかし、もう本当に時間がないわけで、この10月、11月にも拉致の可能性の高い方、1000番台リストを合計34人発表いたしました。来週も記者会見をしてまた何人か追加する予定でございますけれども、とにかく可能な限りの情報は開示をして、そして本当の救出にもっていけるようにしていきたい。
私どもに1億円いただければ間違いなく何人か引っ張り出して見せます。ただ、まあ、私どもは去年、予算を付けていただいたんですけれども、2月13日の6者の合意を日本政府が呑むとはけしからんと言って蹴っ飛ばしてしまったので、そのご迷惑をここにおられる皆さんにかけているわけでございますが、とにもかくにも自力で取り返すということをやって参りたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。