国際会議「北朝鮮による国際的拉致の全貌と解決策」全記録
拉致問題を解決するために何をすべきか
6者協議には期待できない
宋永仙・韓国国会議員(ハンナラ党)
増元 宋永仙議員は、盧武鉉政権との戦いを日々繰り広げておられます。今年の5月には、日韓連帯東京集会にも参加していただきました。
(日本語で)
私が、「金正日を」と言ったら、みなさん「打倒せよ」と3回、心から叫びましょう。
「金正日を」 「打倒せよ」 「打倒せよ」 「打倒せよ」(拍手)
(以下韓国語で)
拉致被害者の問題は、残念ながら感情的で悲しい問題という風にだけ扱うことはできません。金正日にとっては、拉致問題が政治的かつ緻密な侵略戦略でもあります。金正日は、拉致していった人たちに、彼らを苦しめるだけでなく、主体思想を注入して洗脳し、工作員として韓国に浸透させて韓国を親北化する工作に利用している可能性も浮上しています。今は、北朝鮮の人々を教育して南に送り込むよりも、拉致被害者を教育してインターネットを通じて韓国社会をかき乱し、親北的な社会に作り上げていくために積極的に活用していく方が、金もかからず効果的、組織的で、そして影響力が大きいからです。
最近、韓国人スパイ団が最も積極的に活用しているのがインターネットです。また韓国人スパイ団は、北朝鮮に直接行くのではなく、中国に支部を置いてそこで北朝鮮から来た人間と会って命令を受け意見を交換し、中国のインターネットを利用して活動しています。
拉致された私たちの家族は、厳しい生活を強いられているだけでなく、韓国社会を転覆させるために積極的に利用されているという事実を我々は冷静に受け止めなければなりません。こういう次元から、拉致問題というのは韓国ではより深刻に、組織的に、国際的にアプローチしていかなければなりません。
拉致被害者の問題はもはや人道的な問題としてだけ扱うだけでなく、政治的で、金正日の主体思想と共産主義を拡散すべき重要な手段として利用されているのです。
韓国は2007年12月に大統領選挙を控えています。この選挙を境にして、金正日が主導する朝鮮半島となるのか、もしくは自由韓国が主導する朝鮮半島となり得るのか、私たちは大きな分かれ道に立っています。決して自由民主主義を主導する、言い換えるとわれらハンナラ党が勝利する朝鮮半島になるという保証はありません。金正日を崇拝する親北団体が今韓国に三百万人以上います。
このような岐路に韓国が立たされるようになったことに、拉致被害者が利用されているかもしれないということを国際社会は冷静に受け止めなければなりません。もちろん拉致被害者家族の悲しみを無視しようということではありません。
韓国で拉致被害者問題を解決するのが難しいのは二つの理由からです。先のセッションで崔祐英氏や金ソンミン氏が話したように、金大中政権から盧武鉉政権に至るまでこの8年間、公式的に与党は拉致被害者という存在を認めてきませんでした。そうした言葉さえ使うことを避け、拉致被害者という言葉の代わりに「戦後消息が分からなくなった人」という曖昧模糊な表現を使っています。
二番目に北朝鮮の人権問題について2004年から私を含めハンナラ党の議員が北朝鮮人権法案、韓国軍捕虜支援法案、脱北者支援法案、拉致被害者支援法案、拉致家族支援法案の五つの法案を出しましたが、与党の説得は現在、不可能です。与党は、金正日の気分を害すようなことをすることを、韓国社会を乱すことよりも恐れています。ですからこうした法案を通過させるために私は、ホームページで一千万人署名運動を始めて五か月になりますが進展がありません。テロ法案も同じです。日本では1999年に通過させましたが、やはり金正日を恐れている与党はこの法案をまだ通過させていません。中国よりも韓国のほうが拉致問題に取り組むのがより困難な国です。
何をするべきか、七つの提案をします。第1に、アメリカが中間選挙で民主党が勝利した後、北朝鮮に対する金融制裁を解除するのではないかということを私はとても憂慮しています。スイス、シンガポール、ウィーン、中国、マカオの銀行にある北朝鮮の口座あるいは秘密口座は北朝鮮の人民を食べさせるためのお金ではなく、金正日の秘密資金です。核を作り、ミサイルを売り、対外宣伝を行い、拉致を行うための資金であり、情報を得るために使われるお金です。このお金を凍結させれば拉致もできませんし、情報も入手できませんし、核も開発できません。このお金は凍結させる必要があります。国際社会が一つになってアメリカに圧力をかけなればなりません。このお金の凍結を解除してはいけません。
第二に、それと同時に日本や国際社会は食料、薬品の援助は続けるべきだと思います。金正日は国民が飢え死にしようが関心がありません。ただ食料援助はWFP(国際食糧機構)などが仲介して支援が人民にいきわたっているかどうか検証すべきです。どのようなことがあっても現金が入ってはなりません。
三番目、国連の役割が何よりも大事です。韓国の潘基文氏が国連事務総長に選ばれた後、韓国は初めて国連総会で北朝鮮人権非難決議案に同意しました。日本を始めとする全世界の拉致議連などの国会議員たちとともに、家族会、救う会がみんなで潘基文氏に書簡を送りましょう。北朝鮮の人権問題に対する国連のさらなる制裁が必要だからです。中国は今、逃げているからです。
第四に、私は安倍首相が官房長官だった5月に会って提案しました。韓国、アメリカ、日本、EUそして多くの国の議会が拉致問題について一つになって北朝鮮の人権問題を解決する議員連盟をつくっていこうということです。
5番目に金正日を国際テロ犯として国際司法裁判所に送ろうということです。私は2006年3月にベルギーでのEUの会議に参加してそのことをスピーチしました。EUを始め全世界の拉致議員連盟がそれにサインをして金正日を国際司法裁判所に送ろうと言いました。私たちは支援も力も人手も足りず、政府から弾圧を受け続けているので、それを発言しただけで実行に移すことはできていません。しかし実行しなければなりません。数多くの犯罪をしでかした悪辣な犯人ですから、それを推進する必要があります。
6番目、中国は北朝鮮の人権問題について二重政策をとっています。中国は米国に対するカードとして北朝鮮を利用しています。さらに自分たちの経済成長のために米国の協力を誘導する有力なカードとして北朝鮮を利用しています。中国の積極的な協力を求めるためには、まず国際拉致議員連盟に台湾を参加させることが必要だと思います。私は2日前に台湾に行き、台湾の副総統と国会議長、NSC委員長と会い、この問題について話し合いました。積極的に行うとは言いませんでしたが、十分に参加することはできるとおっしゃいました。
最後に6者協議を北朝鮮の人権問題を解決する場にすることができるという夢から目を覚まして下さい。6者協議はお茶を飲む場所です。どのような問題も解決できる場所ではありません。核問題も、人権問題も、ミサイル問題も、麻薬の問題も何も解決できません。6者協議に期待するのではなく、国連の制裁や我々の国際連帯を積極的に推進していかなければならないのです。