国際会議「北朝鮮による国際的拉致の全貌と解決策」全記録
イニシアチブを取るのは日本
飯塚繁雄・家族会副代表
また今年もあとわずかで終わってしまうということを、私たちはそれを何十年か毎年毎年思って今まできました。昨日も都庁で写真パネル展を開いて、被害者の顔を見るにつけ、非常につらい思いをします。私たちとしては助け出せないじれったさとか空しさというものを感じます。もちろん私たちの手では助け出せないのですけれども、あまりにも長い間そういうジレンマに陥った状態が続いているというのは、当の被害者が一番辛いわけです。今か今かと待っているわけです。写真もそうですが、よく集会で「ふるさと」という歌を歌いますが、あれを歌うともうまた気持ちがいたたまれなくなってしまいます。そういう気持ちで悲しんでばかりはいられないのですが、それぞれ家族も年をとってきている中で、私も68歳になりましたけれども、取り戻す元気を敢えていろいろな方法でつけて頑張っていきたいと思います。
この問題については、家族の直接の交渉で北朝鮮に対応できるわけはないのです。当然のことながら私たちは政府に委ねるしかないのです。それにつけても今まであまりに長い間、日本政府の北朝鮮に対する対応の甘さの付けが今回ってきている。過去のことを言ってもしょうがないのですが、つい言いたくなることもあります。
87年に大韓航空機爆破事件が起きて、その2年後に、犯人金賢姫の日本人化教育に当った日本人女性を探せという論議が持ち上がったのですが、そこでなぜか政府もマスコミも全部消されてしまいました。あれがそのまま進んでいれば、今こんなに苦労することはないと今でも思っています。
そういう意味で、日本政府としては今までの状況を挽回すべく今年になってかなりの動きが出てきていますし、安倍総理に代わってからは対応がものすごく速く、しかもはっきりと見えています。そういう意味では私たちは大きく期待しています。政府に任せるとすれば、確実なしかもハイレベルな組織、人材をもってこの問題に対応していただければ私たちはゆっくりと家で休めるわけです。
ですが、元気を出して、私たちでできることはやろうということで頑張っているわけです。こうやって各国の方々も含めて、全国いろいろな団体、ボランティアも含めてお願いしに回っています。しかも国民の皆様の賛同、ご支援を得るために全国津々浦々回った結果、署名ももうすぐ六百万人分集まるという段階まできています。この数には相当な重みがあります。日本政府がここまで動いたというのもこのパワーだと思いますし、また、北朝鮮に向けての強いメッセージとして日本人は今回、拉致問題についてきちがいのようになっているというような印象を初めて与えたのではないかと感じています。
もはや拉致問題は家族の問題ではなくなってきています。日本の主権をどうやって挽回、確保していくかというような大きな問題になってきています。その挙句、日本の国民の暮らしと安全を守る、あるいは被害者が全員帰ってきて今までの剥奪された生活をも挽回するような動きもしなければならないということにつながってくると思います。
5人の家族の方が帰ってきましたけれども、あの件について金正日は、私に一生の恥をかかせたと言っているようです。日本の総理に拉致を謝りましたが、彼は謝ったことが一生に一度もないというのです。それを敢えてそういう状態にさせたということは下の組織の者が甘かった。横田めぐみさんの骨についても、北朝鮮は、日本は絶対確認できないという情報のもとで出してきたところが、日本ではっきりと偽物と検証されたということもあります。もう二度とこういう恥はかかないというのが金正日の意識だと思います。
したがって、北朝鮮がもう謝らないということであれば、どうすればいいのか。先ほどから結論めいたことがはっきり出ていますけれども、北朝鮮は、この問題を長引かせて時間稼ぎをして自然消滅を願っていると思います。しかしそれは明らかに北朝鮮の策略だということを万人が分かっていますので、時間稼ぎを許さないという見方で、的確に速いスピードの制裁をしていかなければならないだろうと考えています。
私も、金正日の失脚ということが大きな鍵、ステップになってくるのではないかと考えています。よく金正日政権が崩壊すると難民が中国、韓国に押し寄せてくるという話があるようですけれども、私は逆に、金正日がいるから逃げてくるのであって、彼がいなくなれば逃げることもないと思っています。金正日がいなくなって、そのポストが出てきて、その人が常識あるリーダーであれば、各国から相当な支援が行くわけです。そうすると逃げようとしていた人の口にも食料が入る、生活もできる、安心もできるということになるのではないかとも考えていますが、それはそうなってみないと分かりません。
解決策というのは私たち素人にとっては非常に考えづらく難しい問題なのですが、少なくともこの問題を解決しようという大きなパワーを感じていますので、これが問題解決の大きな前進となると思います。今は絶対に後戻りできない状態になっていますので、絶対解決すると自分自身に言い聞かせながらやっています。
10月に国連本部に行きました。アメリカは今も3年前と変わらずに今も日本政府の味方です、とはっはり言ってくれました。ボルトン大使から聞いたのですが、ブッシュ大統領の名言がまた一つ出ました。「私の大統領任期中に北朝鮮が存在することは自らの汚点である」とはっきり言いました。まだ2年ありますから、ブッシュ大統領が任期中に相当なバックアップをして下さるだろうと思います。
それにしてもイニシアチブを取るのは日本ですから、日本政府は北朝鮮に対する交渉の仕方の面でも戦略、戦術を練って、あのしたたかな北朝鮮に対して馬鹿にされることなく、何か言われたらその何倍か言い返すようなものも玉として出していただきたいと思います。北朝鮮は、日本は六者協議に参加する資格がないよなんて言っていますが、さすがに安倍総理は、そういうことを相手にする必要はないと、北朝鮮の意向を察知して対応しています。協議の場になると、他の国もいるから、日本は日本として毅然たる態度でものを言っていかないと他の国の協力も得られなくなると思います。確かに会議に臨むにはそれだけの戦略、戦術、準備をもって参加されると思いますけど、ああ言ったらこう言うといった準備もしていただいて、日本は今度こそ本気だな、日本の支援、援助がなければこれはやっていけないんだという形にもっていけるように強い発言をお願いしたいと思います。北朝鮮には必ず見返りを要求するという目的があるはずですから、そういった面でも強いカードを用意しながら交渉していく、交渉というよりも要求でしょう。強い要求のもとに日本は本気だということを国際社会にもはっきり分からしめ、金正日に対する国際社会の締め付け、また日本の強い締め付けによって失脚する場面をつくるということが今回の大きなポイントではないかと感じています。
家族会といっても情報分析は難しいのですけれども、救う会の方々、拉致議連の方々の情報、意見も伺いながら行動すべき道をはっきり弁えて今後もがんばっていきますので、皆様の強いご支援をよろしくお願いいたします。